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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页

青空文庫

それで戸波が庭先からのぞきこんでみると、庄吉の母、訓導あがりのデップリ体格のよい堂々たるお婆さんだが、何かを両手でジッと抑えている。後向きで何を抑えているのだか分らないが、何か動くものを動かないように、ジッと抑えている感じである。それで戸波が縁側へあがって、

「御隠居さん、何ですか」

声をかけてはいって行くと、ふりむいて、光る目で、ギラリと睨んだ。

「馬鹿が死にました」

それから抑えていたものの手をはなして、出てきて、

「医者をよんできて下さい」

と言った。

戸波が中を見ると、梁にシゴキをかけて、庄吉がぶらさがっていた。高さが六尺ぐらいしかない梁だから、小男の庄吉はちょうど爪先で立っているように、ほとんど足が床板とスレスレのところで、かすかにゆれていた。洟が二本、長く垂れて目を赤くむいて生きて狂っているようにギラギラしているのが見えたのである。庄吉の母は、たぶん子供部屋に異様な物音をききつけて、すぐ立上ってはいって行ったものだろう。戸波は庄吉を梁から下して、医者へ走って行った。

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私は電報がきて小田原へ行ったが、私がついてまもなく、その日の新聞で良人の自殺を知った女房が帰ってきた。