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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页
女の本性がこれだけのものなら、女は軽蔑すべき低俗な存在だが、然し、私はそういう風に思うことができないのである。最も素直な、自然に見える心情すらも、時に、歪められているものがある。先ず思え。嫌われながら、共に住むことが自然だろうか。愛なくして、共に住むことが自然だろうか。
私はむかし友達のオデン屋のオヤジを誘ってとある酒場で酒をのんでいた。酒場の女給がある作家の悪口を言った。オデン屋のオヤジは文学青年でその作家とは個人的に親しくその愛顧に対して恩義を感じていた。それで怒って突然立上って女を殴り大騒ぎをやらかしたことがある。義理人情というものは大概この程度に不自然なものだ。殴った当人は当然だと思い、正しいことをしたと思って自慢にしているのだから始末が悪い。彼が恩義を感じていることは彼の個人的なことであり、決して一般的な真実ではない。その特殊なつながりをもたない女が何を言っても、彼の特殊な立場とは本来交渉のないことだ。私は復讐の心情は多くの場合、このオデン屋のオヤジの場合のように、どこか車の心棒が外れているのだと思う。大概は当人自体の何か大事な心棒を歪めたり、外したままで気づかなかったりして、自分の手落の感情の処理まで復讐の情熱に転嫁して甘えているのではないかと思う。