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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页

青空文庫

私の女からいくらかずつの金を借りてダンスホールへ行くようになった。しかし男は見つからなかった。それでも働く決意はつかないのだ。踊子や女給を軽蔑し、妙な気位をもっており、うぬぼれに憑かれているのだ。

最後の運だめしと云って、病院の医者を誘惑に行き、すげなく追いかえされて戻ってきた。夕方であった。私が図書館から帰るとき、病院を出てくるアキに会った。私達はそこから神社の境内の樹木の深い公園をぬけてアパートへ帰るのである。公園の中に枝を張った椎の木の巨木があった。

「あの木は男のあれに似てるわね。あんなのがほんとに在ったら、壮大だわね」

アキは例のチャラチャラと笑った。

私はアキが私達の部屋に住むようになり、その孤独な姿を見ているうちに、次第に分りかけてきたように思われる言葉があった。それはエゴイストということだった。アキは着物の着こなしに就て男をだます工夫をこらす。然し、裸になればそれまでなのだ。自分一人の快楽をもとめているだけなのだから、刹那的な満足の代りに軽蔑と侮辱を受けるだけで、野合以上の何物でもあり得ない。肉慾の場合に於ても単なるエゴイズムは低俗陳腐なものである。