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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页

青空文庫

すぐれた娼婦は芸術家の宿命と同じこと、常に自ら満たされてはいけない、又、満たし得る由もない。己れは常に犠牲者にすぎないものだ。

芸術家は――私はそこで思う。人のために生きること。奉仕のために捧げられること。私は毎日そのことを考えた。

「己れの欲するものをささげることによって、真実の自足に到ること。己れを失うことによって、己れを見出すこと」

私は「無償の行為」という言葉を、考えつづけていたのである。

私は然し、私自身の口によって発せられるその言葉が、単なる虚偽にすぎないことを知っていた。言葉の意味自体は或いは真実であるかも知れない。然し、そのような真実は何物でもない。私の「現身」にとって、それが私の真実の生活であるか、虚偽の生活であるか、ということだけが全部であった。

虚しい形骸のみの言葉であった。私は自分の虚しさに寒々とする。虚しい言葉のみ追いかけている空虚な自分に飽き飽きする。私はどこへ行くのだろう。この虚しい、ただ浅ましい一つの影は。私は汽車を見るのが嫌いであった。特別ゴトンゴトンという貨物列車が嫌いであった。線路を見るのは切なかった。目当のない、そして涯のない、無限につづく私の行路を見るような気がするから。