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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页
私にとっては、父のない子供より父が在るだけ父に就て無であり、ただ墨をすらせる不快な老人を知っていただけであった。
私の家は昔は大金満家であったようだ。徳川時代は田地の外に銀山だの銅山を持ち阿賀川の水がかれてもあそこの金はかれないなどと言われたそうだが、父が使い果して私の物心ついたときはひどい貧乏であった。まったくひどい貧乏であった。借金で生活していたのであろう。尤も家はひろかった。使用人も多かった。出入りの者も多かったが、それだけ貧乏もひどかったので、母の苦労は大変であったのだろう。だから母はひどいヒステリイであった。その怒りが私に集中しておった。
私は元来手のつけられないヒネクレた子供であった。子供らしい可愛さなどの何一つない子供で、マセていて、餓鬼大将で、喧嘩ばかりしていた。私が生れたとき、私の身体のどこかが胎内にひっかかって出てこず母は死ぬところであったそうで、子供の多さにうんざりしている母は生れる時から私に苦しめられて冷めたい距離をもったようだ。おまけに育つにつれて手のつけられないヒネクレた子供で、世間の子供に例がないので、うんざりしたのは無理がない。