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たましいのあえぎ

魂の喘ぎ

大倉 燁子

「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,081 字 · 20 页

青空文庫

「君達は知らないのかな、あの公高失踪事件――、大分旧い話だが、先代の藤原侯には公高という一人息子があった、それがつまり藤原家の何代目かの後継ぎだが、十一の時行方不明になったままで今日に至っている。その当時評判だったのでね、その頃僕はまだ馳け出しの記者だったが侯爵家の内偵を命ぜられ調査してみたが表面に現われている事以外には何もわからなかった。後継ぎがいなくなったというので、親族会議の結果、南条男爵の三男坊の公正が養子に迎えられ、間もなく増比良伯爵の姫君と結婚した。つまり夫婦養子さ。翌年は先代が亡くなり、三年目に先代夫人が心臓麻痺で死んでいる。不幸つづきの侯爵家もその後は至極無事で、空襲にも免れたという話だ」

折柄昼やすみで数人集っていたが、中で古参の記者の一人が物知り顔に乗り出して、

「その公高って少年は非常な利口者で、稀れにみる美貌の持主だったそうですね、尤もあのお母さんの子だから綺麗なのも当然だが、――僕は公高は見ないから知らないが、母夫人の方は二度見ましたよ。一度は乗馬倶楽部で、飾り気のないさっぱりとした乗馬服を着て栗毛の馬に乗っている颯爽とした姿、もう一度は肌の透いて見えるような薄い夜会服の上に毛皮の外套を引っかけて自動車に乗ろうとしているところ、実にぞっとするような美婦人だった。