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ましょうのおんな

魔性の女

大倉 燁子

「マスコット 一巻七号」1949(昭和24)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,898 字 · 20 页

青空文庫

彼女は盃を彼の手に渡しながら、

「今日は無事でしたね」

と云った。

「何が?」

「何がって、オホホホホ桃子さんとのことが」

本庄はむっつりと口を結んだ。

「ねえ。私と別れて、あのひとと結婚する御相談が纏ったの? 随分酷い計画をなさる人達ね。でも、私、あなたが何と仰しゃっても、別れるのはいや」

と云って、彼にすり寄り、手を握って彼の持っている盃に唇をつけて一口飲んだ。

「ねえ、あなたも飲んでよ」

「いやだ」

彼は音を立てて荒々しく盃を置いた。

「いやなはずね、もういい加減まわっているんですもの。桃子さんのお酌でなくっちゃおいしくない?」

「何を云う?」

「ただ訊いてるのよ。私の愛情がうるさいんだって? 罰あたりねえ、あなたって人は――、誰のおかげで、若いあなたが、特別にこんなに出世して、いい地位を得たのか、忘れたの?」

彼の膝に手を置いて、執拗な凝視をつづけながら、

「みんな、私の、いいえ、霊のおかげじゃありませんか。それがなかったら、重役候補はおろか、下っ葉の走り使いがせいぜいよ。その大切な私を裏切って、桃子さんなんかと一緒になりたいばかりに、別れるの、殺してやるのって、大きな口もいい加減になさらないと、世間の物笑いになりますわよ」