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ましょうのおんな
魔性の女
大倉 燁子
「マスコット 一巻七号」1949(昭和24)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,898 字 · 20 页
四
そしたら文句はあるまい」
「でも奥様は、あなたの全財産なんかより、あなたという人が欲しいんじゃないか知ら?」
「なら、どうすればいいって云うんだ?」
彼は焦ら焦らして怒ったような口調で云った。
「どうすればって、私には分らないけれど、きっと離婚を承知されまいと思うのよ」
「どこまでも従いて来ようって云うんなら――、そして、いつまでも、この僕を金しばりにして苦しめようって云うんなら――」
と彼は血の気がさっと顔から退いて、鼻の頭に油汗がにじみ出た。
「どうしても離れないって云ったら、永久に僕から離れて、二度と附き纏えないようにしてやる」
「と、仰しゃると? どうなさるの?」
不穏の空気に、桃子はおびえながら青くなって訊いた。
「うむ。その時は――、その時は殺しちまうばかりさ。殺せば完全に僕から離れる。いや、それは冗談だよ。アハハハハ」
桃子は彼の膝に顔を伏せた。
彼女の頭の上で、本庄の空虚な笑い声がつづいた。
四
安子は本庄の帰って来る時間を知っているように、玄関のベルを鳴らそうとすると、内から扉を開けてにこやかに彼を迎えた。
茶の間に入ると、お銚子がいいお加減についていた。