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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
——二川家殺人事件
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页
然し、或場合には、子供は何の悟る事なしに、何の疑うことなしに、真の両親と信じて幸福であり得るかも知れぬ。世の多くの人達は、そういう幾パーセントかの幸福であり得る場合に望みをかけて、戸籍法違反を敢てするのかも知れない。
世間に、より多い例は、両親のうち片親が――大抵は父親であるが――真実の親であって、一方の親はそうでないにも係らず、その両親の真の子として届ける事である。この場合は、前の場合よりも、より複雑な関係があり、そうしなければならない事情は、より切実であるといえる。然し、そうしたからくりは子供の将来に悲劇を齎らさないとは断言出来ないであろう。
ふと気がつくと、午後の日ざしは大分傾いて、割に涼しい風が吹いていたにも係らず、野村の身体は、恰で雨にうたれたかのように、汗でグッショリだった。然し、彼はそれを拭おうともせず、次の方に読み進んだ。
二川子爵の告白書の次は、父の手記と、告訴状や抗告書などの写しとの錯綜だった。
之で見ると、二川家では早くも悲劇が訪れたらしい。
重行が死んで、五歳の重明が家督相続届を出した時に、突然、関西方面を放浪していた叔父の重武が上京して来た。