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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
——二川家殺人事件
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页
五
「やっぱり遺書でしょう」
「えゝ、どうもそうらしいです」
野村は封を切った。母親は暫く坐っていたが、
「ゆっくり読みなさい」
野村はそれを見送って、電灯をパチンと捻って、送られた遺書を読み始めた。(前篇終り)
五
重明から送られた遺書は、一、二、三と三部に分たれて、それ/″\番号が附してあった。
野村は順序に従って、先ず第一の番号のつけてあるものを取上げた。日付は書かれていなかったが、内容と前後の関係から推して、重明が雪渓の発掘を始める少し以前らしく、六月の終りか、七月の初めの頃と思われた。
六月の雨は中世紀の僧院のように、暗くて静かだ。適に晴間を見せて、薄日が射すと、反ってあたりは醜くなる。太陽の輝く都会は僕にとっては余りにど強い。
野村君、とこう親しく呼びかけても、或いはこの文章は君の眼に触れないかも知れない。実は僕はその方を望んでいるのだ。然し、兎に角、僕は梅雨に濡れた庭を眺めながら、之を書いている。
野村君、考えて見ると、僕の人生は六月の雨のそれだった。暗くて静かだった。滅多に太陽を見ることが出来なかった。
けれども、僕にとっては、却ってその方が気易かった。