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こうちょうのなげき

黄鳥の嘆き

甲賀 三郎

——二川家殺人事件

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页

青空文庫

二川重武は多く関西方面にいたから、大阪の有名な私立探偵社の社長砂山二郎が、その為に選ばれることになった。

所がこの謀計は正に図に当ったらしいのだ。というのは、それから間もなく、重武はあっさりすぐこの訴訟抗告を取下げているのだ。検事の方でも、元々一家内の事だし、原告側にも確証はない、裁判にでもなると大へん面倒な事なので、原告が取下げたのを幸いに、不問にしたらしいのだ。

書類の中に、砂山秘密探偵社の大きな封筒があって、「二川重武の調査報告」と書かれていたので、野村はやゝ胸をときめかしながら、それを開けたが、失望した事には中味は空だった。父の日記の方を見ると、

重武に関する調査報告書は本日重武に交付せり。

と書いてあった。思うに重武は交換条件の一つとして、その調査書の原本も複製も残らず、彼の手に収める事にしたのだろう。そうしてそれは恐らく焼却して終ったのに違いない。探偵社の方へも、むろん少なからぬ金が、報酬の名義で送られたに相違ないのだ。

重武の秘密というのは、いずれ詐欺とか横領とか、相当重い罪で、二川家の方で問題にすれば、きっと危なかったものに違いないと、野村は思った。