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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
——二川家殺人事件
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页
重明が自殺を遂げたという事は、単に重明が死んだ場合のうちに入るのだろうか、それとも、二川家に変事の起ったうちに入るのだろうか――
野村が思い惑っている時に、静かに襖が開いて、母が這入って来た。母の顔はひどく緊張していた。
「二川重明さんから、何か書いたものを送って来ましたよ」
「えッ、二川から」
野村は吃驚した。母はうなずいて、
「えゝ、遺書らしいですよ。大へん部厚なもので、速達の書留で送って来ました」
野村は半ば夢心地で受取った。
野村の父儀造は、二川重明の父重行が急死すると、直ぐ彼の遺書を受取った。今又野村は重明が変死を遂げる途端に、彼から遺書を送られた。父子二代、こういう事が繰り返されるとは、何と奇しき事ではないか。
書留の書類には添え手紙があった。それは宮野得次という全く未知の弁護士から送られたもので、それにはかねて二川子爵から依頼を受けていたもので、絶対に秘密に保管して、子爵が死んだ時に、直ちに遅滞なく貴下宛に送るべく命ぜられていたもので、今やその命令通り実行するものである事が認められていた。母親は彼女の夫に先代子爵の遺書の送られた事をよく覚えているので、不安そうに、