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こうちょうのなげき

黄鳥の嘆き

甲賀 三郎

——二川家殺人事件

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页

青空文庫

だが、どうしてそれを区別することが出来るのだ!

もし真の叔父が、大雪渓の下に眠っているのなら――あゝ、野村君、僕はあの呪われた速記を読んだ時以来、夜となく昼となく、この妄念につき纒われたのだ。

僕は、仮令それが気違いじみていても、いや、気違いそのものの行為であっても、僕は乗鞍岳の雪渓を発掘せずにはいられなかったのだ。むろん、僕はその前に、乳母であり、僕の実母であった高本清を探した。然し、生きている筈なんだが、彼女をどうしても尋ね出すことが出来ないのだ。僕に残された方法は、たった一つだったのだ。

野村君、僕が雪渓発掘の準備にかゝると、叔父重武は表面は何の動揺も示さなかったが、それ以来は、彼の見えざる看視が、見えざる触手が、僕の周囲で犇めいている事を僕ははっきり感ずるのだ。決して、それは僕の神経衰弱や、強迫観念のさせる事ではないのだ。

野村君、僕はどんな困難と闘っても、やり遂げて見せるつもりだ。雪渓の発掘が失敗に終ったら、又別な方法を考えるつもりだ。一生かゝっても、無一文となっても。気違いと嘲けられても、馬鹿と罵られても、叔父が真の叔父か、偽者であるか、きっと区別をつけるつもりだ。