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こうちょうのなげき

黄鳥の嘆き

甲賀 三郎

——二川家殺人事件

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页

青空文庫

正午近い時だったが、玄関には薬を貰う人達が群れていた。

野村は立止った。

今しも調剤した薬が、薬局の狭い口から出されて、看護婦が「誰々さん」と呼んだ。薬瓶と薬袋とは暫く、窓口の前の小さな台の上に乗っていた。やがて、女中らしい恰好した者がそれに進み出た。と、それと前後して、一人の中年の男が窓口に近づいた。

野村はハッと気がついた。彼は躍り上った。そうして、医院の中にツカ/\と這入って、太田医師に頼んで、薬局係りの看護婦に会せて貰った。

野村の呼吸は弾んでいた。

「一昨日ですね、二川さんから薬を取りに来た時の事を思い出して下さい。あなたが窓から出しましたか」

「はい、二川さんと呼んで、台の上に置きました」

「その時にですね、窓の側に誰かいませんでしたか」

「さア」と看護婦は鳥渡考えて、「一昨日の事ですから、よく覚えていませんけれども」

「思い出して下さいませんか」

「どなたかおられたかも知れません。然し、どうもよく覚えておりません」

「そうですか」野村はがっかりして、「では、昨日か今日薬取りに来なければならん人が、来ないという事はありませんか」

「あア、調べて見なければ分りませんけれども――一人ありますわ。