轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

明らかに彼は、何事か扉の彼方に、忌怖すべきことを意識しているらしい。がやがて、旗太郎は、顔面をビリリと怒張させて、醜い憎悪の相を現わした。そして、痙つれたような声を前方に投げた。

「ク、クリヴォフ夫人……貴女は」

そう云った途端に、扉が外側から引かれた。そして、二人の召使が閾の両側に立つと見る間に、その間から、オリガ・クリヴォフ夫人の半身が、傲岸な威厳に充ちた態度で現われた。彼女は、貂で高い襟のついた剣術着のような黄色い短衣の上に、天鵞絨の袖無外套を羽織っていて、右手に盲目のオリオンとオリヴァレス伯(一五八七―一六四五。西班牙(スペイン)フィリップ四世朝の宰相)の定紋が冠彫にされている、豪奢な講典杖をついていた。その黒と黄との対照が、彼女の赤毛に強烈な色感を与えて、全身が、焔のような激情的なものに包まれているかの感じがするのだった。頭髪を無雑作に掻き上げて、耳朶が頭部と四十五度以上も離れていて、その上端が、まるで峻烈な性格そのもののように尖っている。やや生え際の抜け上った額は眉弓が高く、灰色の眼が異様な底光りを湛えていて、眼底の神経が露出したかと思われるような鋭い凝視だった。