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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

Th ※(アキュートアクセント付きE小文字)r※(グレーブアクセント付きE小文字) se  S ere na

とたんに一同の口から、合したような呻きの声が洩れた。ことにセレナ夫人は、憤ると云うよりも、むしろあまりに意外な事実なので、ぼんやり旗太郎を瞶めたまま自失してしまった。旗太郎はタラタラと膏汗を流し、全身を鞭索のようにくねらせて、激怒が声を波打たせていった。

「法水さん、貴方――いや閣下! この事件の恐竜と云うのは、とりもなおさず貴方のことだ。しかし、オットカールさんの咽喉に印されていたという父の指痕は――あの恐竜の爪痕は、いったい貴方の分身なのですか」

「恐竜※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と法水は、噛むように言葉を刻んで、「なるほど、恐竜と云えるものが、あの殯室にいたことは事実確かなんです。しかし、その一人二役の片割れは蘭の一種――衒学的に云うと、竜舌蘭なんですがね」と云って、懐中から取り出したレヴェズの襟布を引き裂くと、その合わせ布の間から、縮みきって褐色をした、網様の帯が現われた。さらに、その前面には、それがまた、幾重にも重ね編まれていて、ちょうど拇指の形に見える楕円形をしたものが、二つ附いていた。