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くろべきょうこく
黒部峡谷
木暮 理太郎
「東京朝日」1919(大正8)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,752 字 · 26 页
若しこれが後立山山脈のように日本海の間近に迫っても、尚お千米以上の高度を失わないならば、其壮観は今日に倍するものがあろう、甚だ遺憾である。
立山山脈に較べると後立山山脈は、高さに於て略ぼ釣合の取れた長大な山脈を成している。試に鷲羽ヶ岳から白馬岳に至る間に就て見ると、最高点は黒岳であって、三角点の海抜は二千九百七十八米であるが、絶巓の高さは目測では二千九百九十米の上であろうと思われる。最低の鞍部は針ノ木峠と北南に相対する不動堀沢岳(近時の大町の案内や人夫は之を七倉岳と呼んでいるようであるが、もと七倉岳は、この山の北少し東に在る山で、北葛岳・乗鞍岳等の別名があった)の西にあるくびれ目で、二千百八十米であるから、立山山脈の南半とは、最高に於て少しく劣り、最低に於て少しく優っているが、二千六百米以上の平均高度を有する事は互に同じである。白馬岳以北に於ても鉢ヶ岳・雪倉岳などは優に二千六百米を超えているし、其北の朝日岳でも尚お毛勝山より四米程高い。そして余脈日本海に臨むに至って、千二、三百尺の高さから急に海中に没している。険悪を以て聞えた親不知子不知は、此山脈の末端が懸崖を成して海に突出している鼻づらをこするようにして、波打際を通らなければならなかったのである。