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くろべきょうこく

黒部峡谷

木暮 理太郎

「東京朝日」1919(大正8)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,752 字 · 26 页

青空文庫

此の山脈を後立山山脈と名付けたのは、鹿島槍ヶ岳の一名を後立山と呼ぶ為ばかりではない、立山連峰の偉観は独此山脈中に比す可きものなきのみならず、南北日本アルプスを通じて稀に見る所であるから、立山を主とした越中方面の称呼に従っても、敢て偏見という可きではない、又この名を用いた方が二条の並行した大山脈を表現する上に於ても、白馬山脈と呼ぶよりは適切かと思われる。

この二大山脈を構成する岩石は、既刊の地質図に拠ると主として古生代の水成岩を貫いて迸発した花崗岩類である。更に之を大別すると、立山山脈は角閃花崗岩から成って居り、後立山山脈は黒雲母花崗岩から成っている。この両者の縫合線は、黒部川の支流東沢に沿い、南は樅沢岳附近に至り、北は御山谷の屈曲点附近を過ぎているとのことである。其年代は中生代以前に角閃花崗岩が先ず迸発し、次に黒雲母花崗岩が噴出したものであろうという。そうとすれば両山脈の関係的位置を示すに用いた後の字は、同時にまた山脈生成の時をも示すことになる訳である。

中生代以後になって、角閃小紋岩(石英斑岩と同質であるが、それよりも稍深所で凝固したるもの。