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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

誰に頼まれてやったのでもなかった。自分の好きからやったまでであった。

――土岐頼兼の妾と伜とを、いつ捕えて拷問にかけ、宮方一味の輩の、誰々であるかを調べるそうなと世間の噂に立った頃には、もうその人達は高倉あたりの、その住居から消えていた。

桂子が連れ出して、かくしたからである。

自分の好きでやった所業であった。

で酔狂とも云われるだろう。

「酔狂などとは勿体ない」

と、千寿は涙を浮かべながら云った。

「お助けなくばもう今頃は、わたくしども親子は六波羅の手に……渡され渡って恐ろしい目に……」

「そうねえ」

と桂子もこれには頷いた。

「情けしらずの六波羅に渡って、糾問されたかも知れませぬねえ。……が、それでは神も仏も、この世にないと申すもの。……そうあってはなりませぬ」

「わたしたち親子にとりましては、あなた様はまことに神か仏……でもこのように鬼火の姥とやらに、四方をかこまれてしまいましては……」

「アッハッハッ、大丈夫で」

こう云ったのは右衛門であった。

「われらの大将……いや姫君じゃ……桂子お姫様の力量技倆を、すこしでもご存知でございましたら、そのようなご心配はなさいますまいよ。