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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

道中ご難

「その宮様が明日小原で、大難にお遭いあそばすという、傍観いたすこと出来ますまいが」

「真実なれば傍観は出来ぬ。……が、竹原入道や、戸野兵衛などが心をこめて、お守りしている宮様じゃ、それが突然十津川を立たれ、小原で大難にお遭いあそばす、しかもそのことが前の日にわかる。……これが合点ゆかぬでのう」

「わたくしにも合点参りませぬ」

「これさえ合点参ればのう」

「けっきょく七人の男女の者が、何者であるかさえわかりましたら……」

「そうじゃそうじゃそれさえわかったら、行動を起こすことが出来るのじゃが、今のままではちとどうも。……軽々しく動くのは危険じゃからのう」

陣刀、鎧櫃、胡などを、厳めしく飾った大床を背にし、脇息にもたれている兄六郎の、沈思する顔を見守りながら、舎弟の七郎は色白下膨れの、穏かな顔を少し顰めて火桶の胴を撫すっていた。

と、騒がしい物音が、館の周囲から聞こえて来た。

二人はチラリと眼を見合せた。

その時襖があけられて、近習の武士が顔をのぞかせた。

「何か?」

と六郎は声をかけた。

「大塔宮様明日小原にて大難に遭われまする趣きを、郷民ども耳に入れまして、いかが致せばよかろうか、お館様のご意見ききたしと、二百人三百人続々と、詰めかけましてござります」