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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

「貴殿……」

と範覚は嗄れた声で、金剛杖を構えたままで、疑がわしそうに呼びかけた。

「貴殿……お名前……お明かしくだされい! ……あまりに美事なお腕前……お名前聞きたい……おあかしくだされい! ……拙者は金地院範覚と申す!」

「いや」

と頼春は言下に答えた。

「決して姓名申しますまい! ……誰にも云わぬ、何者にも明かさぬ。……が、このようにご記憶くだされい。……『裏切り者』と。……な、このように」

「裏切り者? とは?」

「またこのようにご記憶くだされい。『神の界に属する御一方に、許すとのお言葉うけたまわるまでは、死ぬことの出来ぬ男』じゃと。……」

「不思議なお言葉! ……気にもかかる! ……拙者も一人の裏切り者を、この頃尋ねているのでござるが……しかしその者は無双の美男、かつ立派な若い武士、貴殿のような盲人ではない。……」

さよう、範覚の尋ねているのは、――姥と共にたずねているのは、土岐蔵人頼春なのであった。

そうして頼春とはかつて一度、京の往来で姥と一緒に、暁方に逢ったことがあって、その風貌は知っていた。

が、まさかに現在自分と、向かい合っているこの男が、その頼春とは思わなかった。