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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

(どっちへ廻っても苦しい身の上だ)

このことが彼の心持ちを、憂欝にしているのであった。

(それより血判をした連判状を、あの夜曲者に奪われた筈だ。それが六波羅方の手にはいろうものなら……)

一網打尽謀反のともがらは、六波羅方に捕えられよう!

今日は捕り方が来るだろうか? 明日は縄目の恥に逢おうか? ――このことが彼の心持ちを、さらに憂欝にするのであった。

秘密を心に持っている。

それを妻に知らすまいとする。

で、自然と彼の起居動作、言語応対眼づかいなどが、陰険となり不正直となり、隠しだて式となるのであった。

早瀬にはそれが悲しかった。

その良人の隠しだて式が!

(あのお方の朗らかだった心持ちを、ああも陰欝にした悪い何かを、どうあろうとわたしは探し出して、わたしの力で消さなければ)

で彼女はカマをかけては、いろいろ良人へ話しかけた。

よく晴れた今日は九月××日で、坪庭では萩と木犀と菊と、うめもどきと葉鶏頭と山茶花とが、秋のお祭りを行ってい、空では雁が渡来したばかりの、元気のよい声でうたっていた。

「あなた」

縁に近く円座を敷き、その上に坐り脇息により、物憂そうに坐って、三白眼で、庭を見ている頼春に向かい、早瀬は坪庭から声をかけた。