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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

しかもそこには強大な武力が持明院統を擁して藩居している。そうした点があるだけに、吉野朝には悲壮の気がみなぎっていて、これがその歌の調べに弱くはげしいすすり泣きと、怒りと、仰望とを与え、ともすれば挫けようとする気力を、正統を信ずる心によって鞭打ちつづけた厳しくもわびしい感触をあたえているのである。それは『玉葉』『風雅』の歌のように自然の愛撫から感じられる、静寂な生活のほの温かさでもない。為家から為氏・為世の撰集に感じられるところの、和歌を風流の嗜みと化した数寄者の偸安でもない。吉野の廷臣に歌を歌わせたものは、自らに悲運を感じた感傷であった。私のいいたい点を諸君はすでに察しられたであろうか。私は大義名分の上から見て、吉野朝の悲運を導いた、尊氏の叛逆を認容できないが、だからといって、吉野の廷臣がすべて英雄になったとはいいたくない。鎌倉末の京都貴紳が数百年来未曾有の吉野流離という非常事を体験したことによって、その異常さを日常茶飯のことと感じるほど逞しい野人に忽ちにして変質したとは私は思わない。人はそうあるべきだと心の何処かで期待するが故に、『新葉集』の歌調が万葉人的生気を帯びないで、依然として二条派和歌の調子であることを不満とするのである。