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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう
中国怪奇小説集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 179,458 字 · 363 頁
方は少しおくれていると、その一人が食いながら独り言をいうのである。
「断腸草……」
それを三度も繰り返すので、方は怪しんだ。
「君は食い物のなかに断腸草があるのを知っているのか。それなら食ってはならないぜ」
「そうだ」と、その男は言った。
見ると、馬夫はすでに中毒状態で仆れた。急に一同に注意して食事を中止させ、方は往来へ駈け出してそこらの人たちを呼びあつめた。医師を招いて診察を求めると、それは食い物の中毒であるといった。解毒剤をあたえられて、一同幸いに本復したが、馬夫だけは多く食ったために生きなかった。
方は一人の男にむかって、どうして断腸草の名を口にしたかと訊くと、彼は答えた。
「食っている時に、誰かうしろから断腸草と三度繰り返して言った者があるので、わたしもそれに連れて言っただけのことで、最初から知っていたわけではないのだ」
断腸草を食えば、はらわたが断れて死ぬということになっている。それを食い物にまぜて食わせたのは、われわれを毒殺して荷物を奪う手段に相違ないと、一行はそれを訴え出ようといきまいたのを、土地の人びとがいろいろに仲裁し、馬夫の死に対して百金を差し出すことで落着、宿の主人は罪を免かれた。