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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう

中国怪奇小説集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 179,458 字 · 363 頁

青空文庫

亀の眼

むかし巣の江水がある日にわかに漲ったが、ただ一日で又もとの通りになった。そのときに、重量一万斤ともおぼしき大魚が港口に打ち揚げられて、三日の後に死んだので、土地の者は皆それを割いて食った。

そのなかで、唯ひとりの老女はその魚を食わなかった。その老女の家へ見識らない老人がたずねて来た。

「あの魚はわたしの子であるが、不幸にしてこんな禍いに逢うことになった。この土地の者は皆それを食ったなかで、お前ひとりは食わなかったから、私はおまえに礼をしたい。城の東門前にある石の亀に注意して、もしその眼が赤くなったときは、この城の陥没する時だと思いなさい」

老人の姿はどこへか失せてしまった。その以来、老女は毎日かかさずに東門へ行って、石の亀の眼に異状があるか無いかを検めることにしていたので、ある少年が怪しんでその子細を訊くと、老女は正直にそれを打ち明けた。少年はいたずら者で、そんなら一番あの婆さんをおどかしてやろうと思って、そっとかの亀の眼に朱を塗って置いた。

老女は亀の眼の赤くなっているのに驚いて、早々にこの城内を逃げ出すと、青衣の童子が途中に待っていて、われは龍の子であるといって、老女を山の高い所へ連れて行った。