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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《剣侠受難(けんきょうじゅなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 頁

青空文庫

「いったわねえ、目付けろって! で、お前は目付けたんだねえ。ああそうとも、よく目付けたねえ……今夜が過ぎればよかったんだ。……妾の人になったんだから。……早かったわねえ、一日だけ! 忠三さん!」というと凝視した。「縄をお貸しよ、お前の縄を!」

「どうなさいます? ねえあねご?」

「あのねえ」ジイッと天井を見た。「掛けておくれよ、あそこの梁へ!」

「ううむ」とうなったものである。「首を……あねご? い、いけねえ!」

「貸してくれないの。え、忠さん! そう、それなら借りません。……舌をかんだって死ねるねえ」

寝椅子の上へつっ伏した。背筋からかけて肩口まで、ウネウネ波のようにうねるのは、泣きじゃくっている証拠である。

眼を垂れ床を見詰めたが、忠三心でつぶやいた。「こんなにもほれていたのかなあ」

月が窓からさして来た。店から客の声がした。酔客のうたう声である。

※(歌記号、1-3-28)逢おうとしても逢われない。

フラフラとお町立ち上がった。

「妾は行きます。さようならよ」

「あねご、送りましょう。へいそこまで」

「妾は行きます。さようならよ」

戸口の所で振り返った。

「お前たっしゃでいるがいいよ」