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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《剣侠受難(けんきょうじゅなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 頁
現在に満足をしているらしい。もしもお京にその心があったら、これだけは聞かなければならない筈だ。
「どうして肩に負傷して、木地師の駕籠などに乗っていたか? また忠弥の注進によれば、杉窪の里の乱闘の際姉の君尾を取り返そうと、袴広太郎という一人の義士が、追っかけて行ったということだが、その時の袴広太郎と、この袴様とは同一人なのか?」
が、お京は聞こうとはしない。
それにしても全く不思議である。お京は紀州家の息女ではないか。それだのに木地師というような、いやしいいやしい漂泊民の郷へ、どうして単身入り込んだのだろう? 紀州頼宣にしてからが、どうして送ってよこしたのだろう?
何もかもがわからない。わかっていることは一つだけだ。久しい間別れていた。二人の本当の恋人同士が、思いもよらない境遇のもとに、顔を合わせたということだけだ。
二人はいつまでもだまっている。秋陽が森の中へさし込んでいる。木立がテラテラと輝いていた。ふとい一本の栗の木がある。その幹に何かうごめいている。老衰をしたかぶと虫である。死に遅れたかぶと虫! 季節に置いて行かれたかぶと虫! 上へあがろうあがろうとしている。