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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《剣侠受難(けんきょうじゅなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 頁

青空文庫

なんともいえない奇態な妖気、それが天草という老武士から、陰々とせまって来るからである。

「うむそいつもご存知ない? これは当然、そうでござろう。お話し致す。城之介とはな、貴殿が捕えて同心へ渡した、あの白衣の修験者でござる。そうしてそやつが持ってるので、その巻軸というものをな」

「が、すでに修験者は、同心の手から奉行所へ」

「なるほど渡っているかもしれない。しかしそこには裏があります。地獄の沙汰も金次第、いやな例だが引かねばならぬ。貴殿お家はたいへん裕福、それ、そいつを利用して」

「わいろを使えとおっしゃるのか?」

「いや、そこまでは指図いたさぬ。潔白のご気性、おいやであろうな……では、やむを得ぬ。お眼にかけよう、貴殿、魂のおののくものを」

天草時行スッと立ち、ふすまを開けると、縁へ出た。

「広太郎殿ついておいで」

縁の行きづまりに一つの部屋、それを通るともう一つ、そこのふすまを引き開けた。昼だというのに暗いのは、四方たてこめているからで、ほんのり照ったのは雪洞の灯。脇息により、手は合掌、開いたひとみで洞然と、天井を見ている若い女、間違いはない、お京である。

「逢ってお話しなさるがよい」