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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁

青空文庫

尾張の家中は江戸の方へ大筒の鉄砲を運ぶ途中で、馬籠の宿の片側に来て足を休めて行くところであった。本陣や問屋の前あたりは檜木笠や六尺棒なぞで埋められた。騎馬から降りて休息する武士もあった。肌脱ぎになって背中に流れる汗をふく人足たちもあった。よくあの重いものをかつぎ上げて、美濃境の十曲峠を越えることができたと、人々はその話で持ちきった。吉左衛門はじめ、金兵衛らはこの労苦をねぎらい、問屋の九太夫はまた桝田屋の儀助らと共にその間を奔り回って、隣宿妻籠までの継立てのことを斡旋した。

村の人たちは皆、街道に出て見た。その中に半蔵もいた。彼は父の吉左衛門に似て背も高く、青々とした月代も男らしく目につく若者である。ちょうど暑さの見舞いに村へ来ていた中津川の医者と連れだって、通行の邪魔にならないところに立った。この医者が宮川寛斎だ。半蔵の旧い師匠だ。その時、半蔵は無言。寛斎も無言で、ただ医者らしく頭を円めた寛斎の胸のあたりに、手にした扇だけがわずかに動いていた。

「半蔵さん。」

上の伏見屋の仙十郎もそこへ来て、考え深い目つきをしている半蔵のそばに立った。目方百十五、六貫ばかりの大筒の鉄砲、この人足二十二人がかり、それに七人がかりから十人がかりまでの大筒五挺、都合六挺が、やがて村の人々の目の前を動いて行った。