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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁

青空文庫

第四章

一

十一月下旬のはじめには、半蔵らは二日ほど逗留した公郷村をも辞し、山上の家族にも別れを告げ、七郎左衛門から記念として贈られた古刀や光琳の軸なぞをそれぞれ旅の荷物に納めて、故郷の山へ向かおうとする人たちであった。おそらく今度の帰り途には、国を出て二度目に見る陰暦十五夜の月も照らそう。その旅の心は、熱い寂しい前途の思いと一緒になって、若い半蔵の胸にまじり合った。別れぎわに、七郎左衛門は街道から海の見えるところまで送って来て、下田の方の空を半蔵らにさして見せた。もはや異国の人は粗末な板画などで見るような、そんな遠いところにいる人たちばかりではなかった。相模灘をへだてた下田の港の方には、最初のアメリカ領事ハリス、その書記ヒュウスケンが相携えてすでに海から陸に上り、長泉寺を仮の領事館として、赤と青と白とで彩った星条の国旗を高くそこに掲げていたころである。

第四章

一

中津川の商人、万屋安兵衛、手代嘉吉、同じ町の大和屋李助、これらの人たちが生糸売り込みに目をつけ、開港後まだ間もない横浜へとこころざして、美濃を出発して来たのはやがて安政六年の十月を迎えたころである。