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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
二
妻籠の隠居はもういい年のおばあさんで、孫にあたる寿平次をそれまでに守り立てた人である。お民の女の子のうわさを半蔵にして、寿平次に迎えた娵のお里にはまだ子がないことなどを言って見せる人である。隠居は家の人たちと一緒に門口に出て、寿平次を見送る時に言った。
「お前にはもうすこし背をくれたいなあ。」
この言葉が寿平次を苦笑させた。隠居は背の高い半蔵に寿平次を見比べて、江戸へ行って恥をかいて来てくれるなというふうにそれを言ったからで。
半蔵や寿平次は檜木笠をかぶった。佐吉も荷物をかついでそのあとについた。同行三人のものはいずれも軽い草鞋で踏み出した。
二
木曾十一宿はおおよそ三つに分けられて、馬籠、妻籠、三留野、野尻を下四宿といい、須原、上松、福島を中三宿といい、宮の越、藪原、奈良井、贄川を上四宿という。半蔵らの進んで行った道はその下四宿から奥筋への方角であるが、こうしてそろって出かけるということがすでにめずらしいことであり、興も三人の興で、心づかいも三人の心づかいであった。あそこの小屋の前に檜木の実が乾してあった、ここに山の中らしい耳のとがった茶色な犬がいた、とそんなことを語り合って行く間にも楽しい笑い声が起こった。