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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
その時の二人の年齢もまた忘れられずにある。吉左衛門は五十一歳、金兵衛は五十三歳を迎えたころであった。二人はそれほど盛んな食欲を競い合ったものだ。
「あんなおもしろいことはなかった。」
「いや、大笑いにも、なんにも。あんなおもしろいことは前代未聞さ。」
「出ましたね、金兵衛さんの前代未聞が――」
こんな話も酒の上を楽しくした。隣人同志でもあり、宿役人同志でもある二人の友だちは、しばらく街道から離れる思いで、尽きない夜咄に、とろろ汁に、夏の夜のふけやすいことも忘れていた。
馬籠の宿で初めて酒を造ったのは、伏見屋でなくて、桝田屋であった。そこの初代と二代目の主人、惣右衛門親子のものであった。桝田屋の親子が協力して水の量目を計ったところ、下坂川で四百六十目、桝田屋の井戸で四百八十目、伏見屋の井戸で四百九十目あったという。その中で下坂川の水をくんで、惣右衛門親子は初めて造り酒の試みに成功した。馬籠の水でも良い酒のできることを実際に示したのも親子二人のものであった。それまで馬籠には造り酒屋というものはなかった。
この惣右衛門親子は、村の百姓の中から身を起こして無遠慮に頭を持ち上げた人たちであるばかりでなく、後の金兵衛らのためにも好かれ悪しかれ一つの進路を切り開いた最初の人たちである。