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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
まであとに見捨てて、もう一度中津川をさして帰って行こうとする人である。かつては横浜貿易を共にした中津川の商人万屋安兵衛の依頼をうけ、二千四百両からの小判を預かり、馬荷一駄に宰領の付き添いで帰国したその同じ街道の一部を、多くの感慨をもって踏んで来た人である。以前の伊那行きには細君も同道であったが、その人の死をも見送り、今度はひとりで馬籠まで帰って来て見ると、旧いなじみの伏見屋金兵衛はすでに隠居し、半蔵の父も病後の身でいるありさまだ。そういう寛斎もめっきり年を取って来た。
「先生、そこはあまり端近です。まあお上がりください。」
と半蔵は言って、上がり端のところに腰掛けて話そうとする旧師を囲炉裏ばたに迎えた。寛斎は半蔵から王滝行きを思い立ったことを聞いて、あまり邪魔すまいと言ったが、さすがに長い無沙汰のあとで、いろいろ話が出る。
「いや、伊那の三年は大失敗。」と寛斎は頭をかきかき言った。「今だから白状しますが、横浜貿易のことが祟ったと見えて、どこへ行っても評判が悪い。これにはわたしも弱りましたよ。あの当時、君らに相談しなかったのは、わたしが悪かった。横浜の話はもう何もしてくださるな。