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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

その日は終日離れに這入ったきり、二人とも出て来なかった。三時の茶の時に、かれらは話で疲れたような顔を出し、茶を喫んでから外に散歩にゆくと又戻って来て、夕方までこそっとも音も立てずに、やはり離れにこもっていた。外に聴えないように微笑っては話をし、話がなくなると遠慮深くまた微笑うという、時間の愉しさがあるらしかった。私も自然に大声で物をいうことを控え、かれらが夕方、長野市に向け出かけてゆくので、はじめて昌子という人が長野にいることが判った。千ガ滝あたりの別荘に滞在していたことも実際だが、長野の町にいるのでは、暑いのに度たび東京から訪ねて行ったことは大変だったであろう。

夕方、かれらは軽井沢の駅で、西と東とに別れて列車に乗った。かりそめの宿をもとめた私の家は、その後も、しばしばこの二人をかくまった。誰も知らずまた知る必要もない二人は、どんな時でも、音も言葉も、話し声も立てないで四畳半にこもった。立原道造も泊り堀辰雄も泊った離れは、百田宗治、萩原朔太郎も旅行にくると此処で昼寝をして、立って行った。

小扇

嘗つてはミルキイ・ウエイと呼ばれし少女に

指呼すれば、国境はひとすぢの白い流れ。