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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

そこには一番多くの人が群れていた。誰が音頭を取るのか、音頭取りの声も自慢そうであった。

思えど

思わぬ振りをして

しゃっとして

おりゃるこそ

底は深けれ

踊り唄う人々は、すべてを措いて踊っていた。不平もなかった。生活苦もなかった。血なまぐさい乱世も忘れ、重税や困苦のつかれも忘れ、精いっぱい、愉楽の声をはり上げた。

日頃は拘束されている手を脚を、思うさま伸ばして踊った。

かつらぎ山に

咲く花の候よ

あれをよと

よそに思うた

旅駒の背に

大きな月は、真上になった。踊りの輪は、影法師と二重になった。そこへまた、須賀口の踊手たちが来て一緒になった。両方の音頭取りが、美音を競ってこもごもに澄んだ声をはりあげた。

えくぼの中へ

身を投げばやと

思えども

せんなや喃

鎧の捨てどころなき

「――あっ、この山伏め」

突然、誰かどなった。

「間諜だッ」

「敵国のやつッ」

「逃がすな」

踊りは崩れた。

群集の輪の一角で、不意に刃の光を見たからだった。

だが、その山伏は、群集が発見するよりも早く、何者かに、後ろからその刃の手をつかまえて、大地へ投げつけられていた。

勢いよく叩きつけられた山伏の手から、物騒な直刃の戒刀が、群集の足下へ斜いに飛んだ。