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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

(駿遠三の大軍と義元の威勢をもって、京都まで上るに、何ほどのことがあろう)

と、口ぐせにいう義元をたしなめては、沿道の諸州の実態を探らせ、能うかぎりは戦わずに、未然の外交策と利をもって、無血の上洛を計ったりした。

けれど、京都までの沿道で、強国美濃より近江より何処よりも、すぐ避け得られない門出の一戦は、まず織田という敵だった。

この敵は、小粒だった。しかし外交でいけず、利で行かず、戦って実にうるさい敵なのだ。それもきょうやきのうの敵ではなく、遡れば四十余年も前から、一城を奪られれば一塁を取りかえし、一町を焼かれれば十村を焼きかえし、実に、信長の父の代、義元の祖父の代から、両藩の国境には、両家の白骨を埋め合って来た宿怨のあいだなのである。

織田では、疾く、

(今川上洛)

という風評に、四十余年の臥薪嘗胆の酬わるる時節は来れりと、一大決戦を覚悟しているとのことだし、義元はまた義元で、

(手頃な、上洛陣の血祭り)

と、対織田策を練っている今であった。

――いやもう今宵を最後とする軍議なのであった。

雪斎和尚や元康らが、お館を退って帰途についたのは、もう府中の町には、灯一つ見えぬ深夜だった。