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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
もちろん、貴下にも充分な恩賞を約してよい。……諾か非か。即時、隠密の者に、御意のほどをおもらしねがう)
主殿助は、腕ぐみの中へ、しばし面を埋めこんだ。
人間である。考えるということは、人間の所為にすぎないから、それを長くしていればいるほど、当然、高度な精神は、常識的な水準に下がってくる。
(いかに、防いでも、あすともなれば、落城は必至。遠い、金沢表の援軍も、まず、間にあわぬときまっている。――この首をひろわれて、屍を、焼け跡にさらすよりは)
かれは、あり合う竹べらに、「諾」と一字だけ書いて、花押を加え、使いの手へ渡した。
真夜中だったが、主殿助は、すぐ本丸へ出かけて行った。
そして、あたりの守兵に、
「助殿は?」
と、たずねると、兵は、矢倉を指さした。登ってゆくと、助右衛門永福は、やや攻勢をゆるめた寄手の様子に、矢倉の壁に倚りかかったまま、うとうとと、居眠りしていた。
「助殿。助殿……」
肩を、かるく揺すると、
「お。……千秋か。なんじゃの」
助右衛門は、かれを見上げて、いつものような微笑を見せた。
主殿助は、その前に、矢倉の上の兵を、みな遠ざけていたので、すぐ野々村主水からの密書を示し、前後を見まわして囁いた。