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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

ただし、承知の上で、かつがれてやった例はある。――北畠信雄がそれだった。

いや、信雄からいわせれば、わしこそ家康にかつがれたと、今になっては、秀吉にざん訴していることであろう。

ともあれ、ここ人生の最盛期と、天正十三年の新春へむかって、意図のごとく、年を越した者は、秀吉だった。

かれは、こえて四十九歳。――五十にあと一つという男ざかりだった。

年暮に押しつまって、家康の一子於義丸が、表面は、秀吉の養子としてだが――実は、人質として――大坂城に着いた。

年賀の客は、去年より倍加して、春の装いも新たなる大坂城門に、蝟集した。

もちろん、家康は来ない。家康をはばかる少数の諸侯も来ない。

また、明らかに、反秀吉を今も唱えて、この正月にさえ、軍備や諜報に狂奔している一部の勢力も、大坂城の門には馬をつながない。

権門の往来は、そのまま人心の縮図だった。勢力の争覇をめぐる人間分布図といってもよい。――秀吉は来る客来る客を迎えつつそれを眺めた。

二月に入る。

信雄が、伊勢から出て来た。

(正月に来ては、諸侯なみに、秀吉へ年賀にでも来たようで、沽券にかかわる)

かれの思いそうな心理が、顔にかいてあった。