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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
病のためか、殊に、近頃は、怏々として、生を楽しまない風があったが、病にもがき死すよりはと、四月十四日、自室に籠って腹を切り、十六日の明け方、ついにこときれたものだとある。
なお、後々のことは、何事も秀吉どのへ計らえと、老臣衆にいい残し、子どもらは、年寄りの意見次第――と書いた遺書に、秀吉へのお遺物の物も添えてあったとのことである。
秀吉は、前後のもようを、聞きながら、幾度も、
「そうか。……さぞ、秀吉に会いたく、云いおきたいこともあったろうに。――惜しいかな、秀吉も、まだ北陸の旅を果さず、つい小牧以来、会う折もなく打ち過ぎて心のこりなことではあった」
と、人前もなく、涙を拭いては、嘆息していた。
その夜、かれは、家族たちと食膳もべつにして、精進をとった。
もちろん、女たちの局にも忍ばず、独り寝て、寝床の中で、丹羽五郎左衛門の在りし日の事どもを、想いうかべ、
「……ああ、気の毒な人」
と、心から、かれの冥福を祈った。
「かれは、善人だった」
――丹羽五郎左という人物を思うとき、秀吉は、かれの正直誠実な性格とは、まったく対照的な自分の狡さや人の悪さを、認めないではいられない。