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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

いまも彼の口から出たように、とぼけ上手で、忍耐づよく、しかも強情無類な難物を、いかに、自己の掌の上に乗せるかを――彼は、茶々を愛する如く、摩耶をあやすが如く、於通の軟化を待つがごとく、興味をもって対している。

家康は何事にも、気の永い熟柿主義を奉じているが、それを、読み抜いている秀吉も、かれに負けない根気のいいところがある。決して、力や威をもって、懐柔できない相手とは、小牧以来、秀吉がとうに観ているところだった。

「いや、ふたりとも、しんが疲れたことであろ。そう気を病むな、鬱するな。大儀大儀、酒でも参るがよい」

と、二人をねぎらい、秀吉は、隣を振り向いて、銚子を持つ女童を招いた。

「よいわさ。徳川どのにも、それくらいな駄々はこねさせてやらねばなるまい。……が、長益も雄利も、見ておれよ。やがて、近々のまに、そのすね者を秀吉の膝に上げて、三河鯛のさかなに赤飯を食わして見しょうぞ。ははははは。七ツ頃から人質の苦労はなめても、あれはやはり大名ッ子よ。秀吉とは、おのずから、苦労がちがう」

長益、雄利に、盃を与え、秀吉も自分も飲み、やがて大歩して、西の丸の寝室へ入った。