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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

「いえいえ、そうしてはおられませぬ。なお、播州の任地には、二年も三年も、妻子の顔を見ぬ部下は、たくさんおりますれば、秀吉ひとりが、老母の膝にあまえ、妻の顔を見てかえったとあっては」

「きびしい遠慮じゃの。……そうそう、久しく甲州に取られていた五男御坊丸が、武田家から送りかえして来たことを、そちは聞いていたか」

「……おうわさに」

「どう思う?」

「めでたいことと存じました」

「御坊丸の無事をか」

「それもそれ……また一つには、織田家の御武運にとっても」

「むむ」

と、多くをいわず、また聞かず、胸と胸にうなずき合って、

「さっそく、明春には、山路の雪の解けるとともに、甲州へ討ち入ろうとおもう……が、どうだな」

「然るべしと存じます。熟れた木の実を揺すぶるようなものでしょう」

「いや、そうもなるまい」

「徳川殿を語らい、十分、三河衆にも働かせたがよろしゅうございましょう」

「家康からも、しきりと、甲州入りの儀を、これまでにすすめては来てあったが、大坂表の本願寺一類の始末がつかぬうちはと、ひとえに大事をとっていたことが、今日となってみれば、却ってよかったように思わるる」

「わが君が甲州へお入りの頃には、秀吉の兵馬も、備中へ乗り入れ、芸州の毛利が中軍へ、なだれ入っているやも知れません」