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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

紅葉を喰う

「身は地下に埋もれても、魂魄はなお奉公するといって死んだほどの重治じゃ。その重治が生前から気に痛んでいたこととあるのに、どうしてこの秀吉とて反けよう。心のままにしたがいい」

「ありがとう存じまする。おゆるしを賜わるうえは、兄の遺命どおり、兄の遺物を抱いて……」

「どこへ行くか」

「どこか、草深い里の尼院へでも」

またしても、涙にくれた。秀吉もあらぬ方を向いて立っていた。同じ自然の中には棲息していても、やはり人はあくまで煩悩の外のものではあり得ないとみえる。

――散る紅葉や啼く小鳥、その清々しさには秀吉も学び得なかった。

紅葉を喰う

秀吉からいとまも許された。亡兄の遺髪や小袖を持った。陣中に女の長居は無用。おゆうは次の日すぐ秀吉に、

「お別れ申しまする。くれぐれもお身を御大切に」

と、旅支度までして、最後の暇乞いに出たが、

「まあ待て、もう二、三日、陣中にとどまっておれ」

と、ひきとめられた。

かけ離れた仮屋の一棟に、おゆうは幾日もぽつねんと、兄の遺髪を弔っていた。四日五日と過ぎるのに、秀吉からは何の沙汰もなかった。

山には霜がおりて来た。時雨るたびに四山の木の葉はふり落されてゆく。