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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

「宗易。あれなら御師範として、申し分はありますまい」

「織田の軍が、初めて、堺へお討入りのせつ、どこやらの家で、お茶をあがられ、その折、侍坐しておられた筑前どのが、挨拶に見えた千宗易を一見されて――これは名器だ――と仰っしゃったそうな」

「そんなことを云いましたな。はははは」

「後に、それを思い合わされてか、安土へ召しよばれ、近ごろでは、ここの御亭主がよく仰せられるおことばにも――筑前は大気、宗易は名器、一対の者と、一しおお目にかけられておられます」

亭主の信長は、初めて口をさし挟んで、

「筑前には、その後、宗易とも久しゅう会わぬことであろうの」

「はい。両三度は、何かの折に相見ておりますが、中国へ参って以後は」

「幸いじゃ。あとでこれへ呼ぼう」

「ほ。参っておりましたか」

「水屋をいたしおる」

「それは、ぜひ……」

と、待ちもうけている折へ、縁をめぐって来る静かな跫音がした。

「宗易か」

「はい」

「入るがよい」

そこの障子が腰低くあいて、冬日の中に宗易のすがたが見えた。

宗易が加わってからそこの座談はなお賑わった。多くは他愛ない世事ばなしである。また、茶器名物のことなどだった。