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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

それを追いかけて来た四、五名の兵が見えた。それへ向って、対岸の葭の中から、ぱッと弾煙が立ち、つづいて、パチパチパチとつるべ撃ちが注がれたのであった。

「あッ、殺られた。撃て、撃て」

川べりに伏した味方の兵を救うために、此方からも、北岸の弾煙へ向って弾が送られた。かくてもう命令を待つ遑はない。

「――全軍突撃」

という秀吉の命令は、実に、この銃声が揚ってから後に届いたものであり、明智方もまた、敵の動きに反動を起して、果然、川を渡って来たものだった。

淀へそそいでいる川口はかなり広いが、少し上流のほうは、さしたる川幅ではない。

ただし、水は数日来の驟雨で相当激している。鉄砲を持った明智の銃隊が北側の藪に姿をあらわして、南側の堤上に立つ羽柴勢を狙い撃ちするあいだに、はや彼方此方、しぶきを蹴って、押し渡ってゆく甲冑群は、明智の精鋭級と目されている槍隊の士たちであった。

「槍組ッ。出ろッ」

堤の上でも高山隊の一将が、躍り上がって、指揮していた。

川幅が狭いので、銃の効果は少なかった。前の一側が撃って、弾込めするため、後列の一側が入れ代る間に、はや此方の岸へすがりついた敵は、直ちに、銃隊のふところへ跳びこんで来る危険があった。