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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

相搏つ両軍

敵味方の累々たる死屍は、松の根がたや岩角に、そのまま、撩乱の朱を見せていた。

「お味方もお味方ですが、敵もなかなかよく戦います。明智方にも、恥を知るさむらいは多いようです」

堀秀政がいうと、秀吉は、さもあろうと頷いた。そしてそれらの死屍のあいだを歩いて、すぐ山を降って行きながら、こう連歌の上の句を口誦さんだ。

松松松どれも日本の姿かな

「たれぞ。下の句を附けてみんか」

――しかしそのとき、円明寺川の方面に、喊声と銃声が揚った。きっかり申の刻(午後四時)頃の陽脚であった。

相搏つ両軍

円明寺川は、山崎の駅の東方にあたる。一とすじの流れは川の姿をなして、淀川に注ぎこんでいるが、附近は葭や蘆におおわれた一帯の沼地である。そして常ならば行々子の声が喧ましく聞えるのだが、きょうは一鳥の声すらない。

――が、この附近にはすでに、その日の午前から、明智方の左翼と、羽柴方の右翼とが、一水を挟んで、じっと対峙していたのである。

折々、ザアと、葭の葉裏を白く翻して、沼地を渡る風の中には、わずかに旗竿の先が見えるぐらいで、軍馬らしいものは両岸共に見えなかったが――北岸には、斎藤利三、阿閉貞明、明智茂朝などの兵力は、先頭予備を合わせて、約五千はいるはずであり、また南岸には、高山右近、中川瀬兵衛の部下四千五百に、池田信輝の兵四千という