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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
「彦右衛門から話せ」
と云い放したまま、腕拱みして、首を埋めてしまった。こういう間にも、むだなく思考をめぐらしているように見えるし、また、ともすれば嘆息となる意志の崩れを如何ともし難いような姿とも眺められる。
「官兵衛どの。驚かれるなよ」
こう厳粛な悲痛味を予告しながら、彦右衛門は手短に事実を告げた。長谷川宗仁からの飛脚もそのまま語った。豪気をもって鳴る官兵衛孝高の顔いろも、それを聞かされた一瞬は凡人以外のものではなかった。
「…………」
何もいわず官兵衛もまた、大きな息と共にその胸へ腕を拱んでしまった。
そして時を措いて、じろと額ごしに同じ姿でいる秀吉を見た。
と、堀秀政はすすと膝をすりよせて、秀吉へ云った。
「はや過ぎたるを思うてみても致し方ござりますまい。世風は今日から吹き変りました。しかも風は順風と覚えられます。お船出の帆をお揚げなさるべき時節こそ到来。ふたつか一つかの御分別、いまこそ肝腎かなめかとぞんじまする」
それに応じて幽古も云った。
「秀政どのの御意、まことに至言。世間の様態、ものに喩えて申すならば、吉野の桜、雪とけて、東風の訪れに会いたるごとく、人もみな、やがてお花見を待つ心地やらんと思わるる。