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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
のが見えた。
「おッ。あれだ」
「左馬介。待てッ」
十数騎の武者は、功を競った。われこそ、その獲物をと、争うかのように、面々、いずれも馬をおどらせて葭の中へ駈け入った。
そこの田圃道から、湖の波打際までのあいだ約一町ぐらいな幅は、いちめんな葭におおわれているのである。乗り入れた面々は、みな葭の根の生えているやわらかい湿地に気づかなかった。馬の脛は蘆の根よりも深く泥土を穿って、到底、その駿足をあらわすことはむずかしい。
「――いけない」
と覚って、何騎かは、馬の背を降りた。或いはまた、ふたたび畦道まで戻って、遠く、葭のない先の方へ迂回を試みた。
葭のあるのは、町はずれの、この附近だけであって、柳ヶ崎のてまえになると、松原つづきとなり、白砂青松の渚である。
「ここへ出て来る他あるまい」と、光春の方向を察して、先へ廻っていたのである。この辺から打出ヶ浜にかけても、羽柴方の軍兵は充満していて、三井寺方面から明智兵を掃討して来た堀秀政とその旗下もまた、附近の松林のなかで、一息ついていた。
――と。そこのみでなく、湖岸の全味方のうちから、何事かわあッと歓声に似たような動揺み声があがった。