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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
ほかにもなお、小舟に乗って坂本城へ渡ったものである、などという説もある。
これらの説はみな、堀秀政やその他の羽柴勢が全然、その兵力を、湖岸や坂本への通路には配置していなかったもののように、あの戦局を見ているらしい。
用兵上、しかも敵に数倍する兵力と、時間の余裕をも充分に持っていた羽柴軍が、そんな一方抑えの作戦をする訳はない。
要するに、左馬介の湖水渡しを否定したがる史家心理には、そのことの至難に思われるのと共に、余りにも、事実そのものが劇的であり過ぎるということに却って、懐疑をもち、これを通俗中の巷説と片づけてしまいたいものがあるのではなかろうか。
けれど古来、身をもって歴史を描いた日本武士のすがたは、常におのずから最高な劇的の一天地を作っている。湊川、四条畷、桶狭間、川中島、高松城の一舟、松の間の廊下、雪の夜の本所松坂町、劇以上の劇でないところはない。
――が今、当の左馬介光春にとっては、そのことは決して、後の人が考えるような至難や無謀を敢えてしているものではなかった。彼はただ日頃の水馬の錬成をきょうはただ甲冑を着けてしている程度にしか思っていなかった。