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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

世々の物

天地に向って慟哭したい感情を反対な形で現わそうとした努力が、思わず朗唱となったのかもしれない。とにかく左馬介は、愛馬を捨ててそこから身を翻えすと、たちまち町口の木戸へ駈けこんでいた。彼の味方は、わッと哭くような声をあげて、彼を坂本の陣営に迎え取った。

世々の物

光春は城に入ると、ここに留守していた全家の老幼男女から、そのすがたを、焦土に降った菩薩のように取り囲まれた。

坂本にとどまっていた光秀の夫人や一族の者も、かならず彼が一度はここへ来るものと信じて、必然、取らねばならぬ最期とは知りながらも、

「左馬どのがここへ見えられた上でも遅くあるまい」

と、待ちに待っていたのであった。

光春はすぐ令を下して、

「云い渡すことがある。将士はみな本丸へ集まれ。城外の木戸へ出ておる者も呼びもどせ」

と、下知させた。

やがて集まった頭数は三、四百に足らなかった。半数以上は、光秀の死を伝え聞くとともに、ゆうべのうち何処ともなく逃げ落ちてしまったものとみえる。

「よく今までここを支えていてくれた。しかし、事こころざしと違い、味方は山崎にやぶれ、大殿も昨夜小栗栖のあたりで敢なき御最期と聞く。