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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
傅人の膝に置かせて、お苦しい目におあわせ致さんでも、よくはあるまいかの」
「さようにも」
秀吉の答えは、どっちともつかないものだった。――折れて出ればそう出るかと、すぐ対立感をとがり立てたものだろう。勝家の全身にはすぐ威厳を交ぜた反感が硬直し出した。劈頭早くも甚だおもしろからぬ顔つきが露骨だった。
「……が喃、筑州殿。三法師君の御出座を求めたのは御辺とはちがうか。――修理は、いっこうに知らんが」
「されば、筑前がおすすめ参らせたには違いありませぬ。ぜひにと」
「ぜひにと」
勝家は大紋の衣服の皺を大きく揺りうごかした。午まえなのでまだ暑気もさしてではないが、彼には式服の厚着と例の皮膚の腫物とが人知れぬ苦痛らしかった。こういうことは些細に似ているが、時によると重大な意志表示にもふと語気の上へ大きな関りをもたないとは限らない。殊に、柳ヶ瀬を越えてから後は、彼が秀吉を見る気もちは、まったく一変していた。従来とて彼を後輩視して来た先入観が根本をなしているので、決して折合いのよい間がらではなかったが、山崎の合戦を境として、逐日、織田遺業の勢力圏に、秀吉なる名が、何とはなく、澎湃たる威勢をもって聞え出して来たことは、勝家として、到底、晏如としているに忍びない現象であるのだ。